時は誰も待ってくれない 上
「自分が分からない…」
「え?」
「高橋さーん」
小さく呟いた私にまるで時間切れのように受付の人が私の名前を呼んだ。
私は振り切るように受付と向かう。
これでいいんだ。昨日もこれで良かったんだ。
自分が伝えたいから人を傷つけてまで伝えるなんてそんなことしていいわけないんだから。
会計を済ませると私は振り返らず病院を出る。
「高橋!」
その瞬間少し遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。
足音はだんだん近づいて来て私の少し後ろで止まる。
これが最後。
もう会うことは二度とない。
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