時は誰も待ってくれない 上
気持ちも伝えない。
空を見ては中谷を思い出すかもしれないけれど
迷わない。
私はゆっくりと振り返って真っ直ぐに中谷を見つめる。
最後。これが最後。
「高橋、俺…」
「中谷…さようなら」

今度こそ振り返らず私は中谷に背を向けた。
何かを言いかけた中谷の言葉を遮った。
だって中谷がこれから言う言葉を聞いてしまったら戻れない気がしたから。止まらない気がしたから。
『またね』
そんな言葉ではなく
『さようなら』
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