時は誰も待ってくれない 上
もう、会うことはない。
でも背を向けるときに一瞬だけ見えた中谷の悲しそうに揺れる瞳が頭に焼き付いて離れない。
空を見つめる瞳よりも、お似合いじゃんと言った時の瞳よりも悲しそうに揺れていた。
私は道の角を曲がると立ち止まって目を閉じた。
こんなにも悲しいなんて思わなかった。
後悔はしないと、これでいいんだと決めてとった行動なのに。
きっと間違っていないと思う。だけどやっぱり胸がぎゅうっと締め付けられて一気に体が熱くなる。
口が震えて気づいた時には泣いていた。