時は誰も待ってくれない 上
私を抱きしめる優が静かに言う。
その時も背中を撫でる手は止まらなかった。
「真由は、一人じゃないから」
いつか山下くんにも言われた言葉。
私は一人じゃない。
「うん…」


胸の奥にある塊が少しずつ溶けていくのを感じた。
顔をあげて精一杯笑って見せると優もいつもの笑顔で返してくれた。
私には優が必要だよ。
もう、私は大丈夫。
初恋だからってもう迷ったりしない。もう中谷への想いは過去にできる。
私には優がいるし私は一人じゃないんだ。
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