時は誰も待ってくれない 上
「よかった…真由」
「ん?」
ちょいちょいと手招きをする優のもとへ小走りで行くと優しく包むように抱きしめられた。
「優…?」
優は石段に座っているから立ったままの私を抱きしめると私の方が優を見下ろすことになる。
優は黙って私の腰に手を回していて今まで見たことのない優に少しだけ戸惑う。
いつもは大胆な優なのに…今回は甘えん坊?
なんか子供みたいで可愛くなって優の黒いサラサラの髪の毛に触れると優は顔をあげた。
「好きだ」
「え?」
「だからどこにも行かないで欲しい」
真剣な顔で私を見上げる優。
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