時は誰も待ってくれない 上
「高橋を見てると生きたくなってしまうって」
その瞬間、栓を切ったように私の目からはボタボタと涙が溢れて流れた。
「それから全部を俺に話してくれた。それで決心がついたのか、前から紹介されてた総合病院で治療するために引っ越すことになったんだ」

何も知らなかった。
ただ突然消えてしまったあなたを空を見る度に想い、なぜ言ってくれなかったのと嘆いたあの日々。
中谷の気も知らずに。私なんかより中谷の方がずっと苦しかったに決まってるのに。
「中谷が高橋さんを忘れた日なんて一度もないよ」
その言葉に私は走り出していた。
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