時は誰も待ってくれない 上
長い長い夢を見た。

『高橋』

白い空間から聞こえる私を呼ぶ声。

ただそこは白く、殺風景でなぜか私は一人で走っている。

『高橋』

また誰かが私を呼ぶ。
その声は苦しそうで消えてしまいそうなくらい弱々しい声でその声に私は導かれるようにただ走る。


そして、なぜか私は泣いていた。


静かに目を開けると見慣れた天井が目に映る。
そっと顔に手をやると頬は濡れていて私は夢を見ながら泣いていたんだ…。
カーテンから漏れている光で朝が来たことが分かった。
それは分かったんだけど、テーブルの上に置かれた時計が記す時間が理解できない。
目をこすって何度もその時計を見る。
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