時は誰も待ってくれない 上
目をそっと開けると目の前には中谷のドアップの顔がある。
あぁ、私ってば中谷を想うあまり変な夢を見たあとは中谷のドアップの夢を見てるのね…。
どんだけ私は中谷が好きなのよ。
「行かねぇから、とりあえず起きろ」
「わー…中谷が喋ってる…」
「はぁ?俺はいつも喋ってるだろうが」
「夢で会えるなんて初めてですか?」
「知らねぇよ!…てか寝ぼけんな」
「はっ…!」
おでこをペチッと叩かれて目を覚ます。
え、あれ?夢は??
顔をあげて周りを見ると誰もいない教室はオレンジ色に包まれていて夕方だということが分かる。
「いつまで寝てんだよ」
「え!?」
「お前昼からずっと寝てたぞ」
「嘘っ!」
そういえば机に突っ伏しったまま寝ちゃったんだっけ?
え、あのままずっと!?
梨香もいない…。
「すげぇ先生に注意されてたぞ」
「全然知らな…」
ふと視界に入った私の手は中谷の小指を強く握っていることに気づいてさっと離す。
「ご、ごめん!!!」
「いや、いい」
「もしかして…ずっと握ってた?」
「あぁ、帰ろうとしたらいきなりすげぇ力で引っ張られた」
うわ…私最悪じゃん。
それでずっと中谷の指握ってこんな時間まで中谷を拘束してたなんて…。
そりゃ帰るにも帰れないよね。
「すいません…」