時は誰も待ってくれない 上
もしかしたらずっと私のこと起こそうとして名前呼んでたのかもしれない。
あれ?じゃあ夢で見たあの声は…
「怖い夢でも見たわけ?」
「へ?」
「俺の、怖い夢でも見た?」
「中谷の?」
中谷は一瞬悲しそうな顔をしたと思うと袖を私の顔にグイッとおしつける。
「な、中谷?」
「…どんな夢だった?」
私の目もとを袖で拭いながら私に聞く。
私の視界は真っ暗で中谷の顔が見えないけど声は震えていた。そして、その震えている声はどこか懐かしく思える。
「私が、走ってた」
「…」
「真っ白い空間で誰かが立ってて」
「…」
「私の名前を呼んでるの」
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