時は誰も待ってくれない 上
冬休み
放課後、キスをしたあの日から私達には会話はなくて話しかけようとしても中谷は体調が悪いのかいつも寝ていた。
明後日から冬休みだ。
私はこのモヤモヤを無くしてはっきりと気持ちを中谷に伝えたい。
緊張はするけど自然と怖くはなかった。
きっとキスをしたりしたあの日のことが私の背中を押しているのかもしれない。
梨香にもその話をすると絶対両想いだよ!と私の手を握ってキャーキャー飛び跳ねていた。
私も心の奥のどこかでそう思っているのかもしれない。
横で眠る中谷がただ愛しくて冬休みなんて来なければいいのにと思う。

「高橋さん」
「あ、はい」
あの注目発言の日から私にやたら話しかけて来る山下くん…だっけ?
どうしてこんなに私に話しかけてくるんだろう。
栗色に染められたフワフワした髪がすごく似合っていて人懐っこい感じの目が可愛い。
身長は中谷と同じくらい高くて話も面白いしクラスの中心的存在の山下くん。
私の後ろの席の山下くんは最近よく私に話しかけてきてはニコニコ笑っている。
「なに?」
「先生が呼んでるよ」
「えっ」
山下くんが指をさす方向を見ると教卓に手をついた数学の先生が名簿表を手に私を睨みつけている。
ずっと中谷のことを考えていたから全く名前を呼ばれていることに気づかなかった…。
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