時は誰も待ってくれない 上
「高橋、余裕そうだな?」
「え…っと…」
「教科書を見なくてもこの問題が解けるのか」
「…」
「よぉし、そんな高橋にこの問題をプレゼントだ」
いらない!!!
そんな早めのクリスマスプレゼントなんていらないよ!!!
私の机の上は前の時間の教科書が置かれていて数学の教科書なんて机の中だ…。
しかも毎日予習はしているものの最近、中谷のことばかり考えていてあまり頭に入ってきていない。
横で眠っている中谷がいる教室で授業なんてもっと頭に入ってきていない。
私は目を泳がせながら黒板に向かおうと席を立つ。
コツン…
後ろに何かが当たって振り返ると山下くんが先生に見つからないように
口元に人差し指を立てて、しーっと先生を確認しながら教科書を渡してくる。
「でも…」
「いいからいいから」
小さな声で断ろうとすると山下くんも聞こえないように小さな声で笑顔で私に教科書を渡してきた。
「どうした高橋」
先生が面白そうに私を呼ぶ。
私は教科書を片手に黒板に向かうけど目の前に並べられた数字と記号にただ頭真っ白。
うわ…全く分からない。
勉強してたつもりが本当に頭に入ってきていなかったんだ…。
チョークを持つものの固まる私の視界に入った教科書に書かれている小さな文字。
あ…これ…。
「答えは解けても気ぃ抜いてるとテストで悪い点とるぞ」
「気をつけます…」
「よし、じゃあ戻れ」
< 49 / 186 >

この作品をシェア

pagetop