時は誰も待ってくれない 上
授業終了のチャイムが鳴って改めてお礼を言おうと振り返る。
「山下くんありが…」
でも最後まで言えなかったのはあまりにも山下くんが優しい顔で私を見ているから。
肘をついて後ろの席で私を見ている顔はいつもの軽いような感じではなくて真剣というか…
何より驚いたのはそんな山下くんに胸が鳴ったこと。
中谷以外にこんなふうに胸が高鳴ったことはないので動揺する私に山下くんが優しい顔のまま私に言う。
「こちらこそ、ありがとう」
「え?」
「手紙」
そう言うと顔の横でヒラヒラさせている紙は私がありがとうと書いて教科書に挟んだ紙だ。
「あ…うん、そんなことしか出来なくてごめんね」
「珍しいね、高橋さんが問題解けないなんて」
それは中谷のことを考え過ぎて…
チラッと中谷を見るとやっぱり爆睡している。
「高橋さん」
呼ばれて視線を山下くんに戻すと笑顔でもなく優しい顔でもなく、真剣な顔をしている。
「明日、話しあるから」
「え…?」
「真面目な話」
真面目な話…?
なんで明日?今話せばいいのに…と思ったけど教室は相変わらず賑やかでこんな場所では真面目な話もできないか。
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