時は誰も待ってくれない 上
「てか山積みだな」
「積み上げるなら片付ければいいのにね」
二人でちょっと中山先生の悪口を言いながら私は山積みになった本に手を付ける。
なんでわざわざ椅子の上に積み上げたかな…
手を伸ばすものの手が…あ、届きそう。
グラ…ッ
「ひゃ…っ」
「高橋さん!!!」
山下くんの焦ったような声を背にして私は倒れてきた大量の本を見つめることしか出来なかった。

本当に一瞬のことで状況を読むのに時間がかかる。
「あ…」
「高橋さん、怪我ない?」
私の顔の横で聞こえる心配そうな声。
本に当たる寸前、山下くんが後ろから腕を引いて私を守ってくれた。
私を抱きしめたまま山下くんが言う。
「どっか痛いとことかない?」
「大丈夫、それより山下くんのが大丈夫?」
だってあんなに厚い本が降ってきたんだよ?
それで私を守ってくれたんだから…
「怪我してない??」
心配する私に安堵のため息を漏らして言う。
「よかった…」
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