時は誰も待ってくれない 上
「もしかして、あの時の?」
「そうだよ」
あの時の優しい声と目の前で話している山下くんの声が一緒だということを今気づいた私は少し驚く。
「あの日の高橋さん、すごく悲しそうだった。その姿を見て、俺も悲しくなった」
だから山下くんはあの時『悲しいね』って言ったんだ…。
「どうして悲しい顔をしてたのかは分からないけどこの子を笑顔にしたいって思ったんだ。本当は俺、超友達少なかったし会話とかも苦手だったけどさ、誰かを笑顔にしたいって思ったから今の俺があるんだと思う」
そして真っ直ぐに私を見て「高橋さんのおかげだ」と言った。
私とは違う山下くん。
私は中谷を見ても悲しい気持ちになってどうすることも出来ないまま今まで過ごしてきた。
でも山下くんは悲しむ私を笑顔にしたいと思い、変わったんだ…。
こんなに真っ直ぐで正直な人に告白されるなんて思ってもいなかったしあの日の男の人が山下くんだったなんて今でも少し混乱してる。