時は誰も待ってくれない 上

「中谷!!!」
校内を走り回って肩で息をする私にゆっくりと振り返る。
中谷は教室にいて帰ろうと席を立ったところだった。
間に合ってよかった。
「なに」
「あのね、言わなきゃいけないことがあるの」
呼吸を整えて少しだけ深呼吸をする。
教室に入って中谷の目の前に立った。
「今日、中谷に言うって決めてたことがあるの」
私は恥ずかしくて少しだけ俯く。
こんなにも告白が緊張するなんて思ってもいなかった。
静かな教室には私と中谷だけでこの心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと思うほど。
「あのね―…」
「山下と付き合うのか」
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