時は誰も待ってくれない 上
隣で梨香が聞いた。
「分からねぇ。でも、いないから」
そう言うと山下くんは教室に戻った。

ここにいない。
でも私は一組から順番に間違いなく確認した。
誰も休んでなかった。
…いない?
そんなわけないじゃん。
「ちょ、真由!?」
私はどうしていないのかなんて考えるより先に職員室へと走る。
分からないなら聞けばいい。噂なんてものより先生に聞いた方が早い。
ただ、何かに追われるような何とも言えない感情が私の体を動かす。
ドクンドクンと胸が鳴り嫌な予感がする。
「中山先生!!!」
勢いよく扉を開いてズカズカと職員室へ入る私を教師のみんなが驚いたように見ている。
「おい高橋、静かに入ってこれねぇのか」
「中山先生」
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