時は誰も待ってくれない 上
『忘れないで―…』

はっと私は目を開ける。
いつもとは少しだけ違った夢だった。
あの声が思い出せない。誰かに似ている気がするのに思い出せない…。
モヤモヤして心にぽっかり穴があいたような、ジグソーパズルでワンピース足りないような感覚に襲われる。
枕は濡れていて私は泣いていたのだと分かる。
涙が乾いて頬が引き攣る。

中谷、今どこにいるの。
またあの悲しそうな瞳で空を見てるの?
会いたい…会いたいよ。
まだあの瞳をしてるなら私はあなたを助けたい。
山下くんが私にしてくれたように。
あなたを心から笑わせたい。
悲しいなら思い切り泣けばいいということをあなたに伝えたい。この私の胸の思いも全て…。

こんなにも会いたい人に会えないなんて
神様は意地悪な人…。
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