時は誰も待ってくれない 上
「真由…」
「梨香、もうすぐ卒業だね」
帰り道ひっそりと立っている桜の木を見て呟く。
まだつぼみで自分がどんなふうに咲き、散るのかを知らない。

中谷が転校してもう二年くらいになる。
あの日から元気がない私を梨香はいつも心配そうに声をかけてくれたりカラオケに連れていってくれたりした。
梨香だって彼氏がいるのに私のためにいろんなことをしてくれた。だから少しでも心配かけないように笑わないといけないのに…心から笑うことはできなかった。
あんな誤解されたまま私の初恋が終わってしまうなんて思ってもなかったから。
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