時は誰も待ってくれない 上
「梨香、ごめんちょっと寄り道していくから先に帰ってて」
「うん、わかった」
無邪気に笑う梨香には本当に感謝している。
こんな私を気にかけてずっと傍に居てくれるのは梨香だけだ。
手を振って帰っていく梨香の背中を見つめながら心の中でありがとうと伝えた。

寝転がって視界に映るのはどこまでも深くどこまでも続く終わりのない空間。
青く晴れ渡った青空は私とは真反対で羨ましく思うのにすごく悲しい気持になる。
中谷もこんな思いで空を見つめていたのかな?
いや違う。もっと深い理由で中谷は苦しんでたんじゃない?
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