時は誰も待ってくれない 上
「俺も…、悲しいよ」
そう言って山下くんも寝転がって私を引き寄せる。
山下くんの声は震えていて私の頬に雫が落ちる。
「山下くん…?」
顔をあげようとすると後頭部に回ってきた手がそれを抑えて抱き締められた。
「悲しいよ…」
山下くんは泣いていた。
ただ「悲しい」と静かに私の肩に顔を埋めて泣いていた。
どうして山下くんが泣くの?
どうして山下くんは悲しいの?
私達は誰もいない河川敷でただひたすら泣いた。
山下くんの涙の理由も知らないまま…。
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