時は誰も待ってくれない 上

その声に山下くんは振り返るとふっと笑う。
「来ると思った」
「え…」
どうして山下くんがここにいるの?
あの日見た、あの日初めて恋に落ちた中谷と同じ場所には今、山下くんがいて私を見つめる。
「どうして…」
「ここで中谷と出会ったから」
「山下くんが…?」
「そう」
微笑んで私を見つめる瞳は悲しそうなのに懐かしそうな目をしていて。
私は胸に何かがこみ上げてくるのが分かった。
「あいつ、昼休みはいつもここに来てたみたいだ」
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