時は誰も待ってくれない 上
「そっかぁ、中谷か」
改めて言われると恥ずかしくて黙って頷く。
「いつから?」
「んー、多分…入学式の日?」
「えっ、そんな前なの?」
「うん。そう思えば時間って早いもんだね」
「真由おばさんみたい」

入学式の日一年生だけの収集があって、さっそく校内で迷子になった私は泣きそうになりながらさ迷っていると体育館裏だったかな…
そこで中谷が壁にもたれかかって空を見ていた。
その時はまだ中谷のこと知らなくて学ランだから何年生かも分からなかったけどそこで一目惚れをした。
太陽の光に照らされて近くにある桜が咲いた木から花びらがフワフワと散っている。
その中でただ空を見つめる姿に恋をした。
「中谷は私の初恋なんだよね…」
「じゃぁ同じ一年生って知ってビックリしたでしょ!」
「当たり前だよー!しかも同じクラスって!」
だんだん見えてきた住宅地に初めての恋バナに盛り上がる私たちの笑い声は響いていた。
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