時は誰も待ってくれない 上
ヒラヒラと散る桜が制服に落ちる。
「高橋さん…もし、中谷が消えてしまったらどうする?」
「え…」
はっと我に返ったような山下くんが慌てて私に言う。
「ごめん、なんでもない」

帰り道、卒業証書が入った筒を片手に山下くんが言った言葉だけが頭を駆け巡る。
そして山下くんは帰り際に私に言った。
「俺は奇跡を信じてる」
「奇跡?」
「約束だからまだ言えないけど俺は信じてるから」
そう言ってまた空を悲しそうに見つめていた。
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