双世のレクイエム
少しばかり落ち込むワタルに二人は気づかず、療杏(りゃおあん)は「さて、」と口を開く。
「これが第一段階の封印を解いた姿どす。なかなかイケてますやろ?」
「髪色が変わっただけだがな」
「でも綺麗だよ、二人共」
「おおきに」「…ふん」
ワタルの褒め言葉に療杏はにっこりと微笑み、豪蓮(くおれん)は照れ臭さからかそっぽを向いた。
「でも、髪色が変わると封印が解けるなんて不思議だね」
呟くワタルに、
「ちゃうちゃう、髪色が変わったからやなくて逆や。封印が解けたから髪色が変わったんどす」
手を横にふり訂正する療杏。
「封印が解けたからかあ…。でもなんで髪?」
「髪は女の命言いますやろ?」
「えッ、二人共女だったの?!」
「なわけあるかッ!」
「イデッ」
すっとんきょうな声を出すワタルの頭にチョップを振り降ろす豪蓮。
危うく舌を噛みそうになったワタルは涙目で豪蓮を睨む。
「…違うの?」
「見てわかんねえのかテメェはッ!どっからどう見ても俺様は男だろうッ!」
「いや、人は見た目で判断しちゃいけないし…」
「多少の見目は見ろよ!つーかそれをなんと言うかわかってんのか貴様ァっ!」
「…うっかり?」
「調教してやろうか節穴野郎…ッ」
拳を握りぷるぷると震える豪蓮に危機感を感じたワタルは、慌てて療杏の後ろに身を隠す。
何故ならここが一番安全そうだからだ。
ぎゅうっと療杏の服を握るワタルに、療杏は「よしよし」と頭を撫でてやった。
「この餓鬼…ッ」
「おお怖い。そんな怖いお顔しなさんな。ワタルはん怖がっとるやないの。レンちゃんはおつむの沸点が低いもんねえ」
「うるせえ変態。そいつがショタだからって庇うんじゃねえよっ」
「ええやないの。ロリこそ正義、ショタこそ生き甲斐!ワタルはんはわてのドツボどすぅぅ~」
「……。」
くねくねと身をよじらせる療杏にも危機感を感じたワタルは、黙って療杏から離れたのだった。