双世のレクイエム
療杏(りゃおあん)も復活したことで話は再開する。
「責任転嫁なんざ言ってたが、これでも責任はとるつもりだ。だから俺たちはお前を世話することにした」
「へ?」
「うーん、あんま言いたくないねんけど~。その紫の髪は異質なんどす。せやからあのままあっちの世界におったらワタルはんの命が危険に晒される思うてなあ」
「はあ…」
「だからここに連れてきた。これでわかったか?なぜ貴様をこの世界に連れてきたのか」
「うーん、なんとなく…。じゃあ、その、豪蓮たちみたいな妖怪になっちゃったの?俺」
「いや、そういうわけじゃねえ」
「ワタルはんは妖怪にならん…、いや、ならへんかったのや。ならへんっちゅーか、なれへん?感じどすなあ」
「つまり、貴様は妖怪とは違う別の化け物になったっつうわけだ」
「…うん。な、る…ほど?」
「混乱してはりますねえ。まあ、わてらにもよう分からんのや。せやかて、ここで一緒に生活して、ほいでワタルはんのことを知っていきたい思うとるんどす」
「……。」
「それと、ここに転送される前に俺様が言ったこと覚えてるか?『俺のためだけに生きてもらう』と」
「……。」
「実はねえ、ここで一緒に暮らすために、ちょおーっとワタルはんに術かけさせてもらいましたのん」
「術っつーか、契約だな。これで貴様と俺たちは主従関係。ま、当然だな。俺たちの力をまともに喰らっちまったんだから」
「……。」
「せやかて、今日からここで一緒に…言うてもワタルはんはこの世界のことなーんも知らへんわけやろ?勉強はわてが教たるさかい。ほいで…」
「ここで生きていくための術(すべ)は俺様が教えてやる。いいな?ワタル」
「……。」
「ほいだら、まず手始めにこの世界のこと説明しましょか。ええね?ワタルは………、ワタルはん?」
「………。」
ぼふんッ
「「?!」」
「ば、ばたんきゅう~…」
次々と難解な言の葉をかけられ、ワタルの脳は処理不能とばかりに爆発する。
ぱたん、とソファーに身を沈めて気絶してしまったワタルを見て、二人は顔を見合わせたのだった。