双世のレクイエム
「まったく、変な奴だな」
「せやねえ。わてらの力まともに喰らいましたのに、こうして生きてはりますもん」
「なのにすぐ気絶するわ生意気だわ…、俺らを従えるとは、なかなか面白れぇ奴だ。テメェもそう思うだろ?」
「わてらを従者にする主人はもうおらへんと思うてましたのに…。こんなちまこい子がねえ」
「ははっ、言えてる」
草原で明け方まで二人がしていたこととは、契約だったのだ。
失敗する確率は高い…むしろ、失敗するだろうと踏んで行った契約だったが、なんとこの少年は二人の血を受け入れた。
二人の力の影響を受け、尚且つ契約のために血を飲ませたところ、それもすべて受け入れ…。
正直、二人にとってワタルは異質であった。
ぶつかるまでもなく、ワタルは何かしら力を持っていたのだろう。それが本人は気づいてないというのだから、尚更可笑しい。
「明日から忙しくなるな、リャオ」
「久しいなあ、こんなワクワクすること、いつぶりでっしゃろ?」
「さあな。俺たちは長い間さ迷っていた。それも時間がわからなくなるほど…」
「…この子には、感謝せなあかんねえ」
「…ああ」
すやすやとソファーで眠る少年の紫になった髪を撫で、療杏は優しく微笑む。
「おおきに、ワタルはん」
「んあ…もう無理だよう、ふたりとも…」
「!」
夢にまで出ているのか、自分たちは。
少し、いや、かなりの嬉しさに二人は笑みを溢した。
この子が主なら、自分たちは…。
呑気に眠る少年を見つめる二人は、これから来る未来に胸が踊って仕方がないのだった。