双世のレクイエム
イチャつきがあったものの、無事体育館についた三人。
学園長の長い長い話も終わり、今日は学園設備について校舎内を探検することになっているそうだ。
「長かったね、あのメガネさんの話」
<そりゃ学園長のことか。まあ確かに長かったよな>
<ほいでも、わてはその分ワタルはんの寝顔見れて幸せやったわ~。眼福眼福>
<やめろ変態キショい…、っていうかワタルお前寝ちゃってたの?!>
「つい」
てへっと舌を出せば殴られた。実体がないくせに威力が抜群である。何故だ。
予想外の痛さに身悶えるワタルに、豪蓮はザマァとばかりにふん、と鼻を鳴らしたのだった。
「ねえねえ、君、誰と喋ってるの?」
「へ?」
ふいに後ろから声をかけられたワタルは間抜けな声を出してしまう。
極力声は抑えていたつもりだが、見られたものは仕方ない。
「ちょっとコミュニケーション能力を高めるためにシミュレーションしてたんだよ」
<いやその言い訳もどーよ>
「あ、そうなんだ」
<しかもそれで納得したっ?!>
<なかなか阿呆の子とちゃう?>
ワタルの下手な言い訳にころっと信じた少年は、「すごいねえ」とまたどこかズレた言葉をかける。
確かに、療杏の言う通り阿呆の子だ。
豪蓮の封印バージョンの紅い髪とはまた違う、真っ赤な髪を持つ少年は「なはは」と笑う。
「俺、【りゅう】ってんだ。君の名前は?」
「ワタル。綺麗な髪だね、俺の知り合いにも紅髪いるんだけど、朱髪もいいかも」
「そう?えへへ、ありがとう」
りゅうの髪を撫でるワタルに、照れたりゅうは頬を爪で掻いた。
りゅうの爪は鋭く、何故か黒い。一体なんの種族かなとワタルは興味を持ち、相手も同じようにワタルに興味を示した。
「ねえ、ねえ、ワタル」
「ん?」
「ワタルの周りに浮いてる二人って、ワタルの友達か?」
「………、え」
ワタルの体が思わず固まる。
二人の姿は見えないはず。しかしりゅうは確かに二人を指差しているのだ。