双世のレクイエム
後ろでふよふよ浮いていた二人もあんぐりと口を開いて固まっている。
<な、なんで見えてんだ?>
<ただの阿呆の子とはちゃうようみたいどすなあ>
「あははっ、阿呆の子だなんて酷いなあ。さっきも聞いたでしょ。ワタル、誰と喋ってるのって。
そこでふよふよ浮いてる二人、ただの浮遊霊じゃないよね?」
「……。」
鋭い指摘にワタルは黙りこむ。
りゅうが何者であれ、この問は敵意によるものなのか、ただ単にオトモダチになりたいだけなのか。
それを見極めなければならない。
「りゅう、君こそ何者?二人の正体を教える代わりに、君の正体も教えてよ」
<お、おいワタル>
「いいよ。でも、俺の正体知っちゃってもワタル、俺のこと掴まえない?殺さない?」
「え?」
「殺さないなら教えてあげる。…けど、ここじゃ不味いかな。ワタル、場所を変えよう」
ワタル手を引いてどこかへ連れていくりゅうに二人は焦った。
このまま連れていかれて何をされるかわからない。
第一、場所を変えなければ不味い事情があるなら、それこそ怪しいというものだ。
大人しく着いていこうとするワタルを止めようと二人が追いかければ、
「ああ、安心して。ワタルに傷はつけないから。二人もおいでよ、俺を傷つけないなら、珍しいもの見せてあげる」
そう言ってにっこり笑うりゅうに、やっぱり二人は疑念を隠せないのであった。
<(おい、どうする)>
<(どうするって…、着いていくに決まっとりますやろ。ワタルはんを一人にさせられへん、かといってワタルはんも危機感なしに着いていっとるさかい。
ここはわてらが行かなあきまへんやろ)>
<(……。それも、そうだな。よし、着いていこう)>
頷き合い、校舎の裏に消えていくりゅうとワタルを追って、二人は急ぐのだった。
手を繋いだままりゅうに連れてこられた校舎裏。けっこう整備が行き届いていることに感心しながら、ワタルはふとどこまで連れていかれるんだろうと思った。
りゅうは手を離してくれそうにもないし、先程から一言も話してはくれない。
別に気まずくはないのだが、どうも盛り上がりに欠ける。
とりあえず何か話そうと口を開いたワタルであったが、
「うん、ここいらでいいかな」
ぴたっとりゅうが止まったことでワタルの開きかけた口も止まる。
どうやら目的地に着いたようだ。