双世のレクイエム
「(綺麗だ…)」
結んである長い白銀の髪をなびかせた青年に、クロイの目は釘付けになる。
髪も綺麗だが、顔も可愛らしい。
クロイはいわゆる、一目惚れをしたようだ。
一方、当の本人はというと。
「はあんっ、ワタルはんとひとつになれて、ものごっつ嬉しいどすわあ…。なんちゅう華奢な体つきっ、美しい手っ。
はぁぁ、舐めたいどすぇ…」
<おーいリャオー。お前それ犯罪一歩手前ー>
息を荒くし、うっとりとワタルの腕を撫でる療杏に呆れた声を出す豪蓮。
声も見た目(髪以外)もワタルだが、口調と中身は療杏とな。一体これはどういうことか。
答えは、ワタルが【憑かれや】だからである。
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ここで簡単、異世界講座
~憑かれや編~
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異世界には様々は性質、つまり体質を持ったものがいる。ごく稀に、ワタルの住んでいた科学文明の発達した世界にもそのような人種がいた。
その内のひとつ、全ての魂(いのち)あるものと融合し、身体の支配権を本来の身体の持ち主とは別の魂に預けることのできるものがいる。
これが【憑かれや】である。
主な一般的例として【イタコ】もそうだろう。
そしてワタルは、その【憑かれや】だったのである。
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療杏に身体を預けたワタルに意識はない。おそらく、身体の奥深くでワタルの魂は眠っているのだろう。
青い炎を指先に灯らせたワタル、もとい療杏はニタリと口角を上げて朱龍に視線を向ける。
それはまさに悪人面であった。
「ワタルはんに傷付けまへん言うた先になんぼ暴れとるんや。そーんな悪い子には、お仕置きどすなぁ」
<手加減してやれよ?>
「レンちゃんに言われんくても、わても自分の力量分こうとるさかい。心配いらへんでぇ」
<獲物をしとめる肉食獣にしか見えねえんだが…>
ひきつり顔の豪蓮を無視し、療杏は灯らせた青炎を朱龍に向けて放った。
「あはははははは!ワタルはんを傷つけるような輩は、おっちねばええんどすっ!あははははははははははっ!」
<うわぁ…、えげつな>
「あはははははははははははっ!それそれそれぇっ!」
<……。>
容赦なく青炎を繰り出す狂った療杏に、一生こいつを敵に回したくないと思った豪蓮であった。