双世のレクイエム
迫るワタルに泣く泣く説明をする療杏。その横では、関係ないですオーラをかもし出す豪蓮が欠伸を噛み締めていた。
一通り説明が終わったところで、ワタルは難しい顔をして腕を組む。療杏は正座したままだ。
「…つまり、リィのパない力に当てられて、りゅうはこんな姿になっちゃったってこと?」
<まあ、力の差で思いっきりぶつこうてまうと起こる現象どす。わてのせいでこいつの力が半分くらい破壊されたんとちゃうかなぁ>
<お前呑気だな…。まあよくあることだ、ワタルも気にすんな>
「いや、気にするよ?!」
強大すぎる療杏の力と正面からぶつかりあったりゅう。そのせいで本来の力が砕けたと療杏は簡単に言うが、それはとても大変な事態である。
『ちょっと地球にヒビいれちゃった☆』ぐらいのことをサラッと言っているようなものである。
しかもそれがよくあること。
一体この二人は星をいくつ破壊してきたのだろうか。
「…うん。まあ、二人がすごいのはわかった。りゅうがこんな姿になったのもね。あとの問題は…」
<りゅうをどうするか、だろ?おいおいワタルぅ、さっきも言ったがそりゃテメェ次第でさっさと片付く用事だろうが。
りゅうを、テメェが引き取りゃいいんだ>
簡単に言ってくれる。
ケタケタとあぐらを掻いて笑う豪蓮に、ワタルだけでなく療杏も顔を渋めた。
「りゅうを引き取るって、それは俺が決めることじゃない。りゅう自身が決めなくちゃ」
<そうやそうや!こんな危険因子、ワタルはんの近くに置いとかれへん!却下、断固きょーひっ>
<お前のは私的な感情だろうがリャオ…。
というかワタル、テメェまさかそいつを見捨てる気か?リャオの力に当てられて本来の力を失ったそいつが、今まで通りここで易々と生きていけるとでも思ってんのか?
だとしたらテメェは大馬鹿者だ。下手すりゃ見殺し、殺害者になっちまうぜ?>
「大袈裟なっ…」
<大袈裟だと思うか?>
「……。」
<俺様たちが、なんのために、テメェを育ててやったと思ってる。【憑かれや】として立派になってもらうために決まってんだろ。
だったら、俺ら以外にも【憑きもの】は必要だ。【憑きもの】がいねえとテメェ、そりゃただの能無し野郎じゃねえか>
「…っ、それ、は…」
<俺様が昔言ったこと、もう忘れたか。『テメェは俺様のためだけに生きてもらう』。餓鬼は素直に言うこと聞いてりゃいいんだよ>
「……。」
豪蓮の容赦ない痛烈な言葉の羅列に、ワタルは黙りこむしかなかった。
別に、見捨てようというわけでもない。自分が【憑かれや】の限り、【憑きもの】が必要なことも十分に理解しているつもりだ。
だからこそ、豪蓮の言い分もわかる。
どれだけりゅうの気持ちを尊重しようと、その生命(いのち)がどこまで続くかわからない。
もしここでりゅうと別れたならば、りゅうはどうなるのか。