双世のレクイエム
まず最初に自己紹介を始めたのは、エルよりくすんだ金髪のメガネくんだった。
「初めまして。【ザイラック】と申します。あの、エルさんに何か迷惑をかけられてませんか?いつも騒がしい人ですので」
それは分かるとワタルが何度も頷くと、隣にいたエルが顔を赤くして遮った。
「ザック!お前は俺の母親か!」
「いえ、どちらかというと父親です」
「そういう問題?!」
どうやらちょっと天然が入ったザイラック。愛称は【ザック】らしい。
次に、白に近い金髪をなびかせたチビちゃんが口を開く。
「あたしは【キリューア】っていうの。あ、【キリ】って呼んでね!よっろしくぅ~」
なんだかエルと少し雰囲気の似た彼女に、ワタルはエルとキリの顔を見比べる。
それに気づいたエルがキリの腕を引いてニカリと笑った。
「ちなみに俺たち、兄妹でーす」
「お兄ちゃんの弱点が知りたかったら、あたしにバンバン聞いてね!スリーサイズまで教えちゃうっ」
「いやんっはずかちー、ってなんでそこまで知ってんのお前?!」
「ふはははっ、あたしはお兄ちゃんの全てを知っているのだよ!キラーン!」
「微笑ましいバカっぷりですが、どうかこの二人と仲良くしてやってくださいね」
「はあ…」
気の無い返事を返すしかないワタルに、エルキリ兄妹が左右に現れワタルの腕をがっちり掴んだ。
「ワタルさんって言うんだって?昨晩お兄ちゃんから聞かされたの。すっごい可愛い顔してるんだねぇ」
「いいや、お前の方が何倍もキューティーだぜ我が妹よ!マイシスターマイエンジェルっ、俺の心の…オアシスだ」
「ひゅー!兄ちゃんカッコいい!」
どうしようテンションについていけない。
あまりのテンションの高さに身を引きたい所だが、この兄妹、ワタルを逃がさまいと腕を掴む力を更に強くする。
溜め息をつくザックに助けを求めようと視線を向けるが、この二人は生粋の馬鹿だからどうにもならないのだという。
ならどうすればと困った顔をするワタル。丁度その時、トリム先生がグラウンドに入ってきた。
慌てて列に並ぶ生徒たちに同じく並ばざるをえなくなったため、ようやっとワタルは解放される。
「また後でね」とエルキリ兄妹は言い残して行ったが、しばらく付き合いたくない。
このグループではだいぶ気力を消費しそうだと、ワタルは引きつり笑いを浮かべるしかないのであった。