双世のレクイエム


「猿の子って、あたしは別に飼育員希望でここに来たんじゃないんだから!っていうか猿って!子供って!」

「お、落ち着いてくださいっ。これも立派なクエスト、何かしら意味はあるはずです」

「あははははそれってどういう意味?せーぜー新人は猿と戯れてろってか、HAHAHA笑えるマジうけるわー」

「エルも落ち着いてください、っていうか目怖ッ、笑ってませんし!」


うふふあははと黒い笑みで体を震わせるエルキリ兄妹に、ザックは引きつりながらも落ち着かせようと「どうどう」と声をかける。

その様子を少し離れた場所で見ていたワタルは、「どう思う?」とふよふよ浮く妖怪二人に尋ねた。


「猿の子の相手をしろってあるよね。でもここは実力派エリート学校。ただの猿じゃないってことなのかな?」

<恐らくな。つーか、それしかありえねぇ。猿の子っつーのにも引っ掛かるしな>

「心当たりあるんだ?」

<一応、わてらも世界中旅してはりましたもんねぇ。猿の子いいましたら、あの子たちしか思い浮かばへんなぁ>

<むしろあいつらじゃねえと成り立たねえよこんなクエスト。あそこのバカ兄妹はああやって嘆いてるが、こりゃ結構レベルの高ぇクエストだぜ?>


「え、じ、じゃあ。腕が千切れるってことも……」

<もしかすっと、ありえるかもな。あいつらは怒らせると面倒くせぇ。調子に乗らせても面倒くせぇ。
ま、俺様はあいつらのこと、嫌いじゃねえけどな。面白いし>

「レンの『面白い』はろくな事ないと思うんだけど…」

<なんか言ったか>

「イエナニモ」


じろりと睨む豪蓮の視線から逃れるように、ワタルは少し身を引いた。

というか、レンさん眼力ハンパない。
眼力だけで人を殺せそうな勢いだ。


冷や汗を流すワタルに、嘆いていたエルキリ兄妹がようやっと復活した。
ぶつくさ言いながらもクエストはやり遂げるそうだ。

やはり、実力派エリートになるにはこんな子供遊びのクエストも楽々にこなさなくてはいけない、ということらしい。

そうと決まればさっそくと、エル率いる第8グループはゲートへと向かっていった。



ちなみにこのクエスト。異世界の東洋での任務らしく、転送しなければいけないらしい。
そこで予めゲートが用意されているというわけだ。

ワタルたちがゲートに着くと、そこへ丁度別のグループも鉢合わせた。

どうやら同じクエストを受けるらしい。

ニヤニヤと品のない笑みを浮かべるニキビ小僧が、ワックスを練り込んだ髪を撫でながらこちらに近づいてきた。

というか、ワックス練り込みすぎて髪の毛輝いてる。すっごい輝いてる。

ワックスニキビ男の後ろにいる連中も、同じようにワックスで髪を輝かせていた。

何これ流行ってんの?
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