双世のレクイエム
「そう、ずっと。勝ちの条件なんて、うはは、そんなのあるわけないじゃん。バッカじゃねーの?
子供の遊びに付き合えよ、あーんちゃん」
「…ッツ」
恐ろしいほどの笑みを向けるミナイに、本能がワタルにこう告げる。
いいや、これは遊び(ゲーム)じゃない。そんな、生ぬるいもんじゃない。
これは、ギャンブルだ。
死ぬか生きるか、今ここで、こんな、子供相手に、命を賭けなければいけないのだ。
いや、そもそもこの子は本当に『子供』なのか?『子供』の皮を被った『化け物』の間違いだろうに。
ワタルの表情には、苦渋の色がはっきりと塗られている。
ああ、本当の本当に。
「わかった。うん、いいよ。俺も鬼ごっこに交ぜてよ。ミナイくん?」
「…イーイ表情だあ、そそるねぇ。うはっ、じゃあ楽しい楽しい鬼ごっこ、はーじめーましょおうっ!」
心が震えて仕方がない。
場所はここ、神社内で遊ぼうか。ここ、けっこー広いんだぜ?ま、そーんなことは置いといてぇ。
「30秒だけ待ったげるから、その間逃げなよ。パツキンの兄ちゃんも、他の奴等の二の舞にならないでねぇ~?」
「ッツ!…誰がっ、負けるかよ!」
「うははは!わーいわーいその意気だよ!せいぜい死なねーように、俺らを楽しませてくれよ。
じゃ、遊ぼっか。はい、イーチ、ニーイ、サーン…」
「いきなり始まんの?!」
そりゃズル過ぎだろうと思いつつ、ワタルとエルは一斉に走り出した。
ちなみに、眠ったままの朱火は危ないので避難させておいた。さすがにあの場で放置というのもアレだし、ということで。
腕を振って走るワタルは、同じく隣で走るエルに目を向ける。
「ねえっ、捕まった二人は今どこにいんのっ!」
「わかんねーんだよそれがっ!探そうにも『あいつ等』がいるから動こうにも動けねーし…」
「あのさあ!さっきから思ってたんだけど、『あいつ等』とか『俺ら』って、一体誰のこと指してんの君たちは!」
走りながら大声を出すとは辛いだろうに。それでもワタルは、聞かずにはいられなかった。
少々曇り気味な表情のエルは、苦々しそうにワタルと同じく大声をあげる。
「誰って、神猿兄弟だよ!あの白ゴーグルつけた奴はミナイ、その弟二人が【キカズ】と【イワナ】だ!」
「【キカズ】と【イワナ】?」
名前を言われても知らないっての!と抗議しようとしたワタル。
だが、その時目の前に何者かが現れた。
その人物を見たエルは、「さっそくおでましだぁ」と言って冷や汗を流しながらニヤリと笑う。
すぐさま足を止め、佇む人物に目を向けた。
その人物は、ワタルたちに視線を移すと、その形良い唇でこう紡ぐ。
「僕の名前は【神猿 危和】(かみざる きかず)。君たちさっさと捕まりなよ」
カミザル・キカズ。
彼は、ミナイと、全く同じ容姿であった。