双世のレクイエム
目が覚めた。と同時に、また『あのとき』のように頭を抱えるはめとなる。
散乱状態、倒れたサル達。
口をぱっかんと開けて突っ立っているエルの表情を見る限り、なんとなく予想はできる。
「……レン、今度はリィじゃなくてお前が暴れたのね…」
「暴れたわけじゃねえよ。テメェが猿の子の相手するっつったから、協力してやったんだろうが」
「うわあ、協力って言葉知ってたんだ。そこにびっくりだわ」
「テメェの脳天潰してやろうか」
おお怖い。
ぎろりと睨んでくる豪蓮に、ワタルは両手を挙げての降参ポーズをする。
豪蓮の拳骨は痛いのだ。今まで何度、星を見てきたことか。
息を吐いて、また新しい酸素を吸い込む。
さて、この状況をどうしようかとワタルは荒れた神社内を横目に、また豪蓮に目を向けた。
「っていうかさ、いつも思うんだけど。俺の出番少なくない?」
「え。何そのメタ発言」
「そういう意味じゃない!」
というか、豪蓮が『メタい』という言葉を知っていたことに驚きだ。
「メタとかそういうんじゃなくて、ただ俺が子猿の相手しようって思ってんのに、レンが勝手に憑依するからっ…っていうか、朱火の時も何気に憑かれてたよね、俺」
「あったりめーだろ。お前バカ?」
「はっ?!」
やれやれと首を振って溜め息をつく豪蓮に、ワタルは何でそうなるのだと大声を張る。
その反応を見て、豪蓮はもう一度深く溜め息をついた。
「あのなあ、テメェは自分の力のこと、ちゃんと分かってんのかよ」
「わ、分かってるよ。っていうか、力の制御ならこの3年でマスターしたはずでしょ?何を今更…」
「はい出ました勘違い~。あなたバカどぇーすか?」
「うっわウッザ!死語ウッザ!」
「るせぇよアホ。なんだ、今風に言うならあれか?『乙』!」
「どっちにしてもウッザ!」
「うっせー!テメェの反応がウゼェわッ!」
ごちーんッ!
鈍い響きを上げて、豪蓮の拳骨が決まる。
相変わらずの威力に、ワタルは涙目で「ひでー!」と声を上げるが、その泣きすら豪蓮は「るっせえ!」と一蹴りするのだった。
ワタルは後で療杏に慰めてもらったという。