双世のレクイエム
ふと、ワタルは気づく。
『力』イコール『色』ならば、どうして第一封印を解いたレンやリィは、黒髪やら白髪になるのだろう、と。
それを豪蓮に尋ねれば、「馬鹿かテメェは」と呆れられた。
失礼な。
思わずムッとするワタルのおでこに、豪蓮は容赦なくデコピンをヒットさせる。
「いいか?よーく聞け。馬鹿でもわかるよう説明してやっから、耳の穴かっぽじっとけよ」
「あ、あいあいさー」
耳の穴をかっぽじって説明を聞いてみる。しかし、かっぽじらずとも豪蓮の説明はとてもわかりやすい。
豪蓮曰く、『普通の人はまず、髪に自分の力を封印しない』という。
だから、髪の色だけで判断してはいけないと。
「封印するってこたぁ、そいつは自分の正体を何かしら隠してるってことだ。つーことは、そこらで伸びてる金髪坊主やアホ猿共の髪色は、ノットイコール力の色ってわけ」
「な、なるほど…」
「『色』イコール『力』だが、『髪色』イコール『力』ってわけじゃねえ。そこんとこ勘違いすんなよ。
まあ、もっと分かりやすく説明するにゃあ、実践した方が早いだろうが…」
そこで言葉を途切らせ、チラリと視線を後ろに移す豪蓮。
「?」一体どうしたのかとワタルが尋ねようと口を開いた、その瞬間。
「っ…あああああああッ!! な、なんっ、なんでクオさんがここにっ。っていうかキカズとイワナはっ?!」
「よう、ミナイ。相変わらず貴様が一番阿呆面してやがんな」
「久しゅう。レンちゃんだけやなく、わてのことも覚えてくれはると嬉しいどすなぁ」
「ひぃッ!り、りりりりっ、リャオさんまでっ…!」
どこからともなく、颯爽と現れたミナイは、ニヤニヤと笑う妖怪二人を視界に捕らえ、何やら慌てた様子で顔を青くした。
思えば、キカズとイワナもそうだ。
豪蓮と療杏を見るなり、顔を青褪めさせる。一体なぜ?
「ね、リィ。あの神猿兄弟とリィたちって、どんな関係なの?」
「んー、強いて言うなら、喧嘩相手っちゅうことかねぇ」
「へ?」
喧嘩相手、というが。
彼らの様子を見る限り、喧嘩と言うよりは……。
「はぁあ?!け、喧嘩って!俺らを一方的に虐めてきただけでしょーにっ!喧嘩なんて甘っちょろいもんじゃねえでしょうよ!」
「あらあ、人聞きの悪いおサルさんやこと。あんたらが強うなりたい言いはるから、協力してやったさかいに」
「そりゃ強くなりたいって言ったけど…、ありゃ酷い過去でしたよ、師匠!」
師匠?
首をかしげてワタルは妖怪二人に目を向ける。
つまり、神猿兄弟と妖怪二人は、師弟関係だったのか。
それも、弟子にアメとムチを仕込むいじめっ子師匠。
…そりゃヒスりたくもなるわ。
ワタルもその身を持って二人から修行を受けているため、その恐怖と痛みはよく分かる。