双世のレクイエム
@1:オポジット・ガールズ
*
あれから2週間が経った、今日この頃。
『いってきます』の挨拶もしなくなったワタルに、今日も駄目かと妖怪二人は顔を見合わせる。
2週間前。クエストから帰還したワタルたちを迎えたのは、教師陣の温かい安堵した目。だというのに、ワタルは顔面蒼白でぶっ倒れたのだ。
せっかくゲートを通るなり目覚めたワタルだったのに、また気を失うと保健室に運ばれた。
その際ワタルを運んだのは、同じく顔面蒼白したトリム先生だった。
しきりに、何度も『大丈夫か』『しっかりしろ』とワタルに声をかけていたのは、担任故にだろう。
だが、豪蓮と療杏には納得がいかなかった。なぜならトリム先生の焦り様は、ただの『教師と生徒』というにはあまりに尋常じゃなかったからだ。
極めつけに、保健室で眠るワタルの手をぎゅっと握り、目が覚めるまで傍にいたトリム先生の様子もおかしい。
ワタルが目覚めた途端、『ワタル』と。彼は確かにそう呼んだのだ。
初対面の時。トリム先生はワタルを『ワタルくん』と呼んだ。『ワタル』などと、いつの間に呼び捨てするようになったのか。
浮遊霊状態ではなく、実体化した状態で彼の様子を監視していた妖怪二人にも、トリム先生は何も言わなかった。
そのことも気になる。が、それどころではなくなったのだ。
それから1週間。どうしたことか、ワタルの口数が減ったのだ。
『挨拶は基本、常識でしょう!』と豪語していたにも関わらず、その『常識』である挨拶もしなくなった。
それに、気づけばふと眠ることが多くなった。
二人には、ワタルの弱々しくなっていく様子が目に見えて分かった。
一体どうしてしまったのか。
尋ねようにも、ワタルはぼーっとしていて、話もロクに聞きやしない。
それでも諦めず、こうして2週間。
ようやくワタルも、まともに会話するようになった。
朱火との散歩も欠かさない。
けれど、療杏も豪蓮も。何もワタルには尋ねようとしなかった。
きっと尋ねればまた、ワタルが寝込んでしまうような気がして。
大きな不安を抱えながら、妖怪二人はワタルの後についていく。
前を歩くワタルは朱火の話に笑顔で相槌を打ったりしているが、その笑顔がまるで、無理しているように見えてならない。
不安定なワタルに、療杏と豪蓮はしばらく実体化した状態でワタルに付き添うようにしたのだった。
そうして学園についたワタルは、迷うことなく保健室に向かう。
またか、と療杏と豪蓮は溜め息をついた。
サボり、というわけではないが、体が勝手に休息を求めるのだという。
仕方なく、療杏と豪蓮は朱火を連れて保健室から出ていったのだった。
ワタルは一人、真っ白な空間に残される。
あれから2週間が経った、今日この頃。
『いってきます』の挨拶もしなくなったワタルに、今日も駄目かと妖怪二人は顔を見合わせる。
2週間前。クエストから帰還したワタルたちを迎えたのは、教師陣の温かい安堵した目。だというのに、ワタルは顔面蒼白でぶっ倒れたのだ。
せっかくゲートを通るなり目覚めたワタルだったのに、また気を失うと保健室に運ばれた。
その際ワタルを運んだのは、同じく顔面蒼白したトリム先生だった。
しきりに、何度も『大丈夫か』『しっかりしろ』とワタルに声をかけていたのは、担任故にだろう。
だが、豪蓮と療杏には納得がいかなかった。なぜならトリム先生の焦り様は、ただの『教師と生徒』というにはあまりに尋常じゃなかったからだ。
極めつけに、保健室で眠るワタルの手をぎゅっと握り、目が覚めるまで傍にいたトリム先生の様子もおかしい。
ワタルが目覚めた途端、『ワタル』と。彼は確かにそう呼んだのだ。
初対面の時。トリム先生はワタルを『ワタルくん』と呼んだ。『ワタル』などと、いつの間に呼び捨てするようになったのか。
浮遊霊状態ではなく、実体化した状態で彼の様子を監視していた妖怪二人にも、トリム先生は何も言わなかった。
そのことも気になる。が、それどころではなくなったのだ。
それから1週間。どうしたことか、ワタルの口数が減ったのだ。
『挨拶は基本、常識でしょう!』と豪語していたにも関わらず、その『常識』である挨拶もしなくなった。
それに、気づけばふと眠ることが多くなった。
二人には、ワタルの弱々しくなっていく様子が目に見えて分かった。
一体どうしてしまったのか。
尋ねようにも、ワタルはぼーっとしていて、話もロクに聞きやしない。
それでも諦めず、こうして2週間。
ようやくワタルも、まともに会話するようになった。
朱火との散歩も欠かさない。
けれど、療杏も豪蓮も。何もワタルには尋ねようとしなかった。
きっと尋ねればまた、ワタルが寝込んでしまうような気がして。
大きな不安を抱えながら、妖怪二人はワタルの後についていく。
前を歩くワタルは朱火の話に笑顔で相槌を打ったりしているが、その笑顔がまるで、無理しているように見えてならない。
不安定なワタルに、療杏と豪蓮はしばらく実体化した状態でワタルに付き添うようにしたのだった。
そうして学園についたワタルは、迷うことなく保健室に向かう。
またか、と療杏と豪蓮は溜め息をついた。
サボり、というわけではないが、体が勝手に休息を求めるのだという。
仕方なく、療杏と豪蓮は朱火を連れて保健室から出ていったのだった。
ワタルは一人、真っ白な空間に残される。