双世のレクイエム
「っていうか、この前のクエストとその…、ノイジー・ファイト?に、なんの関係があるって言うのさ」
一見すると、あまり関係性がピンとこない。
疑問符を浮かべるワタルに、エルは人差し指をピンと立てた。
「んっふっふ~、よーくぞ聞いてくれましたワタルくんっ!聞きたい聞きたい?聞きたいよね、そうかそうか。
じゃあ特別に教えてしんぜよーうっ!」
「別にそこまで知りたくもないけど」
「実はな、」
無視ですかい。
聞く耳持ってないのかよと少々不満は残るものの、聞けるものなら聞いておこうとワタルも箸を置いた。
朱火は食べることに夢中だ。
ちょっとあまりよろしくないお食事シーンなので、そこの描写はカットで。
「この前の新人研修会、クエストをクリアしたのは40グループ中なんとたったの8グループだけ!言わずもがな、俺たちも入れてだ」
どこからか紙とペンを取りだし、丸(○)を8つ書いていくエル。
その内のひとつに、『ワタルチーム』とエルは書き込んだ。
「あとの7グループのクエスト内容は詳しく知らねーけど、どれも死闘を繰り広げたっぽい。怪我人も多かったって聞くしな」
「ちなみにその情報源は?」
「ザック。あいつは見た目からして物知りだけど、こういう交流が不可欠な情報にも悟い。
何かあるとザックに聞いてみな」
頬杖をついてザックのことを話すエルを見る限り、彼は相当ザックのことを信頼しているようだった。
そういう関係っていいな、とワタルも密かに思う。
「話を戻すぞ。それで、他にクリアしたのは第3グループ、第9グループ、第15グループ、第16グループ、第20グループ、第27グループ、第40グループの7つ。
15と16は同じクエストのはずだけど、どっちもクリアしてんのは多分協力したからだろうな」
「あ、そっか。そういうやり方もあるんだ」
「ああ、けどあんましオススメできねーわな」
「え、なんで?」
純粋に疑問をぶつけるワタルに、「ワタルは良い子だな~」とエルは苦笑するしかない。
「だってよ、考えてみ?この新人研修会は俺たちの未来にも繋がるんだ。少しでも功績を上げなきゃ、この世界では生き残れない。
優劣ってのがやっぱ、あるんだよな」
「ふーん…。昼ドラみたいなドロドロがあるってことか」
「素晴らしく的を射た例えだけど、よく昼ドラなんて知ってんな。それって確か、異世界にある『てれび』ってゆー機械から世界に発信してんだろ?
すげーよなあ、異世界」
「あーうん、ソウダネー」
自分はその異世界から来たのだが。
なんていう言葉は飲み込んだ。
異世界から来たとバレた途端、好奇に満ちた目で質問攻めさせるのは目に見えている。
それはちょっと避けたいなと思うワタルは、ボロが出ないよう口をつぐんだのだった。