双世のレクイエム

@3:モノクロ・シンドローム




鈍い音が響く。

それは決して見るに堪えないモノであったが、一度聞けば病みつきになる、そんな心地好いものであった。

「っあ……」

白目を剥いて後ろに倒れる上級生を見据えながら、ワタルは静かに拳を降ろした。


「ひゅーっ、ワタルってば意外とつよーいっ。一発KOとかチョーソンケー」


ぱちぱちと手を叩きながら口笛を吹くオリトもまた、くるりと回りながら敵方を蹴飛ばしている。

容赦のない物理攻撃に、参加している同級生はもちろん、上級生も苦戦していた。


魔法攻撃などが二人に向けられても、二人は決して倒れなかった。
かすりすらしなかった。
それはミケが二人の壁となっているからである。

攻撃はワタルとオリト。
防御はミケ。

これまた型にはまったポジションで三人はこの場にいる全てを相手にしていたのだ。


「にはははっ、弱い弱いっ!」

「うっわぁぁ、オリトってばえげつな…」

「何言ってんの~、ワタルもさっき首ゴキッてやってたじゃんじゃん~」

「あれは手加減した方で、って」

「「不意討ちはやめてね先輩方!」」


背後から襲ってきた上級生たちの攻撃をミケが払い、それを飛び越えてワタルとミケのボディブローがめり込む。

またひとつ、屍が増えた。


見た目は二人ともロリでショタだというのに、なんて強腕なのだ。しかも一突きがえぐい。いや、えぐいなんてもんじゃない。

一度伸ばした相手を強制的に起こしてもう一度地獄を見せる二人の処遇に、観客の半分は引きつり笑いだ。

しかも、


「にははははは!舐めんじゃないだーわさー!にはははははー!!」

「すみませんー、ちょっと失礼しま、あっ、首ゴキッてなっちゃった」

「(すっごい楽しんでる…)」


口元を緩めて狂気を奮う姿はまさに、悪魔そのものである。


その様子を観客席で見ていたエルは、二人の爆裂ぶりに腹を抱えて爆笑していたという。


「ぶははははは!やべーやべーよこれ!すっげーおもしれー!つーか二人ともこえー!ひでー!ぎゃはははは!笑いすぎて死ーーーぬぅううーーー!!」


「エルもなかなか酷いですよ…」

「あたしこんなお兄ちゃんいらないわー」


はぁぁ。
揃って溜め息をつくキリとザックの横で、エルはひーひー言い続けるのだった。



……あれ?ところで朱火は?
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