ラベンダーと星空の約束
2
◇◇◇
6月に入ると雨の日が多くなった。
ジメジメとした不快な湿度の中、
これが梅雨と言うものかとしみじみ感じていた。
北海道に梅雨はない。
フラノの夏は30度を越す日も結構あるけど、カラッとしていて蒸し暑さは無かった。
暑いのは苦手…
東京の夏本番、怖いな…
そんな蒸し暑い6月中旬の朝、
柏寮の自室でスマホに向かって声を張り上げていた。
「大樹!!
いい加減に起きなさいってば!!」
「起きてる…よ…グー…」
「寝てんじゃん!
また遅刻するって、起きろー!!」
「…… グーグー…」
駄目だこいつは…
少し前に、大樹のおばさんからモーニングコールを頼まれていた。
『紫の声を聞けば、スッキリ目覚めると思うんだよねー。
悪いけど、うちのバカ息子起こしてやって?』
おばさん…無理だよ。
私の声なんかじゃ、効果ないよ。
このバカ、また遅刻だよ。
こういう時は…あの人に頼むしかない。
寝ている大樹と通話を繋げたまま、廊下に出て瑞希君の部屋を訪れた。
「瑞希君、朝早くにごめんね?
申し訳ないけど、この前のアレ、もう一度お願いできる?」
「アハハッ 幼なじみの大樹君、また寝坊してるんだ。
毎朝起こすの大変だねー。いいよ、アレやってあげる」
瑞希君は短い咳ばらいをした後、
スマホの向こうの大樹に向かって、低い男の声で話し掛けた。
「紫…何だよ朝っぱらから…抱いて欲しいのか?…しょうがねーなー…
ここ気持ちいい?……俺の名前呼べよ…流星って…ずっと呼んでろ……」
瑞希君…
今日は随分と、際どいストーリーを作ったね…
前回は「キスしようか?」みたいな内容だったのに、エロ度がアップしてるよ。
しかも、何で毎回相手を流星にするかな……