ラベンダーと星空の約束
 



 ◇◇◇



テニスの二回戦を終えた私は、
紫水晶の指輪が、飛び出していたことに気が付いた。



急いでしまい込みホッと気を緩めたが、
もしかして流星が観戦していたのでは……

そう気付き、慌ててギャラリーを見回した。



そして…

フェンス越しに私を見つめる流星と目が合ってしまった。



息が止まるかと思った。

だって流星が、瞬きする事も忘れて、険しい顔で私を見ていたから。



指輪を…見られた…?
正体に気付かれた…?



どうしていいのか分からなかった。

その場から立ち去ることも視線を逸らすことも出来ず、

テニスウェアの胸元を握りしめ、ただオロオロしていた。



テニスで流した清々しい汗の代わりに、冷や汗が背中を伝う。



二人の間に流れる、緊迫した空気に堪えられなくなった時、
瑞希君の私を呼ぶ声で救われた。




「紫ちゃーん!こっちこっち!」



その大声でハッと我に返ったのは、私だけじゃなく流星も同じだった。



手招きしている瑞希君の方へ怖ず怖ずと近寄ると、

意外にも流星は普通の、いつもの軽いノリで、話しかけてきた。




「ゆかりちゃ〜ん、サイコ〜!
パンチラサービスし過ぎだよ〜 超エロかった〜

けどさ〜次のゲームはジャージに着替えた方がいいよ〜?

でないと、俺と瑞希に視姦されまくり〜」



「大ちゃん!
僕までエロ仲間にしないでよ!」




バレて……ない?
指輪を見られてない?

それとも、見られたけど紫水晶の指輪だと気付かなかった?



どっちなのか分からないけど…

はぁー…良かった……



< 184 / 825 >

この作品をシェア

pagetop