ラベンダーと星空の約束
服だけ握りしめても、
手の平に手応えが無いのが淋しく、反って落ち着かない。
あの夏に繋がる糸口の最大のものは、
メッセージカードと紫水晶の指輪だと思う。
メッセージカードは記憶を取り戻す鍵とはなってくれなかったけど、
指輪ならもしかして…
いや…メッセージカードの風景写真を見ても、記憶は戻らなかったんだ。
指輪を見たって、きっと無理…
やっぱりダメだ…
あの指輪は…今はまだ見せられない……
考え込んでいると、流星に胸元を指差された。
「それ、ゆかりちゃんの癖だよね」
「それって?」
「服の胸元を、ギュッと握りしめる仕草」
「そ、そうかな…」
「そうだよ。
それと…その仕草をする時は、決まって今みたいな顔をする」
「私…どんな顔してるの?」
「切ないような…苦しいような…淋しいような…そんな顔」
「そっか…気付かなかった……」
「何考えてた?」
「それは……言えない」
言えない…
そう言うと、流星は悲しそうに顔を歪めた。
彼は大きな溜息をつく。
そして着ているシャツのボタンを手早く外し、床に投げ捨てた。
「流星!?」
驚く私をひょいと持ち上げ、向かい合わせに足の上に座らせる。