ラベンダーと星空の約束
 



「流星… 私……」



「あっ…と…俺コンビニ行く用事思い出した。

ゆかりちゃんはここで涼んでいて。何か欲しい物ある?」



「無い…」



「ん…じゃあ…行ってくる」




気まずそうな流星は、シャツを着て部屋から出て行った。



一人になった部屋の中、
エアコンの排気音と外からの蝉の声がやけに大きく響く。



流星はペンダントトップを見せて欲しいと言った。

私と紫(ムラサキ)ちゃんを結び付けてしまうとも言った。



彼の頭の中ではきっと、
真実に近い仮定のストーリーが組み立てられているのだろう。



だけど、私があのメッセージカードを見て、知らないと言ったから混乱してるんだ。



流星はあの夏を思い出せずにいるのに、
私に紫色を感じている…



言ってしまった方がいいのだろうか…?



思い出せずに苦しんでいる流星に、私の言葉で説明してあげた方がいいのだろうか…?



でも…そうしたからと言って、
あの夏恋した想いは、彼の中に再現されない。



情報を与えても、気持ちだけはどうにもならない。



怖がっているのかも知れない…

私の口からあの夏を話すという、最後の切り札を使っても、記憶が戻らなかったら……

その後はどうしたらいいのだろう。



流星は二度と、私に恋をすることは無いのだろうか……



そう思うと怖くなり、打ち明ける勇気が湧いてこない。



分からなくなってきた…
私は何を望んでいるの?

劇的に記憶が戻ることを望んでいるの?



分からない…

けど…一つだけはっきりと言えることは、

また私に恋をして欲しいと言うこと。



今私が流星を想うのと同じくらい真剣な気持ちで、私を想って欲しい。



フラノから東京へ来た目的は、あの夏の恋の物語の続きを描くこと。



それが私の望み……







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