ラベンダーと星空の約束
キスを貰った所で夢から覚めてしまった。
ベットから出てモソモソと中学の制服に着替えながら、まだ夢の余韻に浸っていた。
あの夏は大切な夏…
初恋の夏…
4年前の小学校5年生の夏休み、私は綺麗な少年に恋をした。
彼の名前は流星。
白い肌、柔らかな茶色の髪、色素の薄い澄んだ瞳…
ガラス細工の様に繊細な美しさを感じる少年だった。
流星はその夏の間だけ、ここ――北海道 富良野(フラノ)――に来ていた。
夏が終われば東京へ帰る。
秋に心臓の手術を控えているから……
抱えていたのは『心臓弁膜症』と言う病。
難しい病名を聞かされても、当時11歳の私には良く分からない。
でも、少し歩けば唇が紫色になり、
息を乱して辛そうに座り込む様子を見れば、
手術が必要なほどに深刻なんだと納得させられた。
私達はラベンダー畑の前に座り、良く星空を眺めて過ごした。
私の家はラベンダーの観光農園。
夏になると広大な敷地が紫色に染まる。
夜はラベンダーの丘の一角をライトアップしていて、
闇の中に青く浮かび上がる花の群れと、
その上空に広がる大パノラマの星空がとても綺麗…