ラベンダーと星空の約束
守る物と捨てる想い
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◇◇◇
[side 大樹]
7月中旬、観光シーズン真っ只中のフラノ。
気持ち良い暑さと晴天の日が続いていた。
少し前まで茶色い土色だった大地は、今は紫色を中心とした豊かな色彩で埋め尽くされている。
紫の所の観光農園は、所有する畑の大部分がラベンダー。
観光客に色んな色合いの紫色を見て欲しいと、
なだらかな丘の斜面に沿って、4種類のラベンダーを数列ずつ植えている。
これぞフラノ。
淡〜濃の紫色のグラデーションが見事だった。
青い空と緑の木々。
一面の紫色に優しい香り……
今が一番美しい季節なのに、紫はまだ帰ってこない。
一足早く夏休みに入っていた俺は、
紫の弟の青空と一緒に、あいつの家の土産物店を手伝っていた。
前々から手伝ってきたわけじゃねぇ。
今年は紫が東京に行っちまったから、
おじさんもおばさんも、すげぇ大変そうだった。
小学生の頃は手伝い程度で、青空の面倒を見ながら俺と普通に遊んでいたけど、
中学生になった時から本格的に色んな仕事を任されて、
紫の働き振りはアルバイト2人分以上だ。
観光農園の客入りのピークは、6月末〜8月中旬にかけて。
まだ義務教育中の中学生の時だって、
観光シーズンだけは遅刻早退欠席しまくり店を手伝っていた。
義務教育を受ける身としては、店の仕事を理由に授業をサボるのは許されないけど、
そこはまぁ…土地柄と言うか何と言うか……
農家の息子の俺だって、
春の種蒔きの時季と秋の収穫の時季は、学校に行ったり行かなかったりしてる。
この辺りは農家が多いから、
先生達も「おう、頑張れよ」的な目を向けるだけで何も言わなかった。