ラベンダーと星空の約束
あの夏を俺は良く覚えている。
記憶力がいいわけじゃねぇけど、あの夏は紫だけじゃなく、俺にとってもいつもとは違う特別な夏だったから…
その特別とは、もちろん悪い意味での特別だけどな……
――――――…
―――――
[大樹 回想]
「大樹… 最近の姉ちゃんはアイツにべったりだね…
もう俺達と遊ぶ気ないのかな?」
「放っとけよ。紫なんかもう知らねー。
青空、キャッチボールしよーぜ」
「そればっかじゃん。もう飽きたー」
「じゃあ…バドミントンにすっか?」
「それも飽きたー。
もー、姉ちゃんがいないと鬼ごっこ系の物が出来ないよ」
あの夏、東京から遊びに来てる心臓病を抱えた少年に紫は夢中だった。
いつもは俺と紫と青空の3人で遊ぶのが当たり前だったのに、
その少年…流星は俺達から紫を奪いやがった。
最初に流星を見た時は悪い印象は持たなかった。
天気のいい昼下がりに、一人木陰で本なんて読んでるから、
遊び相手がいなくて可哀相だと思って声を掛けてやったんだ。
その時は「俺が遊んでやるよ」的な上から目線でアイツを見ていたのに、
いつの間にか紫を持って行かれちまって、立場が逆転していた。