ラベンダーと星空の約束
 


紫を遊びに誘っても
『流星が一人になっちゃうから…』
いつも返答はそればかり。



すげぇ嫌な気分だった。
俺より流星を選んだのが気に食わなかった。



紫と遊びたいなら、俺が静かな遊びに付き合えばいいかもしんねーが…

冗談じゃねぇ。
何で俺が流星に合わせなきゃなんねーんだ。



そんなのアイツに負けを認めたみたいで悔しいじゃねぇか。

俺は…紫といつもみたいに走り回って遊びたいのに……



俺、アイツ嫌いだ。
早く東京に帰らねーかな…




 ◇


もうすぐ8月7日。
本州とは一月遅れの北海道の七夕の日。

その日は紫の11歳の誕生日だった。



毎年紫の誕生日にあげる物は、ウケ狙いのしょーもないプレゼント。



蝉の抜け殻とか、ジャガイモに油性ペンで顔を書いたのとか、

消しゴムのカスを集めてこねて固めた、リサイクル消しゴムとか。



即座に捨てられるような物ばかりあげてた俺だけど、

今年は少ない小遣いでまともなヤツを買った。



プレゼントに選んだ物は、夜空に星が散りばめられた絵柄のレターセット。



紫が…流星の星の話しが好きだって…言ってたからさ……



だからこれを選んだけど、レジに出すのがすげぇ恥ずかしかった。



こんなロマンチックな柄の便箋を俺が使うと思われるのも嫌だけど、

プレゼント用に包装して貰うのはもっと恥ずかしくて……



そのまま何も言わずに金だけ払って、
ビニール袋に味気無く突っ込まれた物を持ち帰るしかなかった。



これでも…いいか。
中身より包装紙の方が立派に見えたら困るしな。



プレゼントは用意した。
後はこれをどうやって紫に渡すかだ。

普通に渡すより何か…
格好良く渡したかったんだ。



< 226 / 825 >

この作品をシェア

pagetop