ラベンダーと星空の約束
子供がうるさく花火なんてしたら観光客の迷惑だ。
だから花火をやる時は、いつも俺ん家の前でやってたんだ。
それなのに何で今回は紫の家でやろうなんて…?
眉を寄せていると、紫はちらりと流星に視線を送った。
「流星が大樹の家まで歩くのは大変だから……」
チッ流星の心配かよ…
俺は紫に声を掛けたんだ。
流星を誘ったつもりはねぇのに、連れて来る気満々かよ。
「うちの前はラベンダー畑に近いから怒られちゃうけど、
ビニールハウス横の草むらでやれば、離れてるし大丈夫だと思うんだ。
そこなら流星の泊まってるペンションからも、より近くなるし…ねっ流星?」
「気遣ってくれてありがとう。
でも僕の事はいいよ。気にしないで、大樹君の家で楽しんできなよ」
「えっ!流星花火やりたくないの?花火嫌い?」
「好きだよ。でもさ、やっぱり悪いし……」
「流星がやらないなら、私もやらないもん。大樹、青空と二人でやって?」
待てよ…それは俺が困るんだよ……
何のために親父に頭を下げて、花火をいっぱい買って貰ったと思ってんだ。
紫が一緒に花火をやってくれんなら…
別に流星くらい付いてきても我慢するよ……
「分かった。それでいいから花火やろーぜ。
紫の家のビニールハウス横に夜の7時に集合な。流星も…来いよ」
「大樹君…ありがとう。嬉しいよ」
やっぱ俺、流星苦手だ。
男のくせに笑顔で『ありがとう嬉しい』なんて言ってんじゃねぇ。