ラベンダーと星空の約束
大樹の家の広大な畑を眺めながら歩いていた。
大樹のおじさんが、遠くの畑で作業している姿が見える。
大きな声で挨拶してみたけど聞こえないみたいで、
荷物を地面に下ろし、両手をぶんぶんと振っていたら、やっと気付いて手を振り返してくれた。
大樹の姿は畑の中には見つけられなかった。
今は…14時を少し回った所だから、大樹はまだうちの店を手伝っていると思う。
15時に上がると言っていたから。
畑を過ぎると、やっとうちの観光農園が見えてきた。
お父さんが丹精込めて育てているラベンダーは、今年も綺麗な紫色に染まっていた。
観光客も沢山来てくれているみたいで、畑も土産物店の周囲も賑わっているの。
ラベンダー畑に近付くにつれ、爽やかで優しい香りが濃くなった。
今まではラベンダーの香りなんて当たり前で、改めて感じることもなかったのに…
今は何だか深呼吸したくなる気分。
懐かしいような、嬉しいような、ホッとするような……
そんな気持ちを感じながら、胸いっぱいにフラノの空気を吸い込んだ。
誰もいない自宅に入り荷物を下ろすと、お店用のエプロンを着て髪の毛をポニーテールに結わえた。