ラベンダーと星空の約束
「指輪…?」
それは金色の指輪だった。
淡い紫色の小さな宝石が付いている。
「アメジスト…紫水晶だよ。
僕の母さんの形見。
その色が君にピッタリだと思って」
流星は父親と二人家族だった。
東京で忙しく働いている父親は、
手術を秋に控えたこの夏、息子を一人でフラノに寄越した。
それは避暑目的と、
夏休みを一人自宅で過ごすより、豊かな自然の中にいるのが良いと考えたからだそうだ。
秋になれば心臓手術を受けなければならない。
長いく苦しい入院生活前の心の癒(イヤ)しに…
そう言われたそうだ。
母親は数年前に亡くなって…
その形見の指輪を、流星は私にくれようとしている。
「ダメだよ!
そんな大切な物もらえないよ!」
慌てて返そうとしたが、
指輪を握らされ、その上から彼の両手が私の手を包みこんだ。