ラベンダーと星空の約束
両親が帰って来て、
いつもの様に家族4人で食卓を囲んだ。
今日のカレーライスは青空が作ったと言うと、
母は驚き麦茶をひっくり返してしまった。
驚きながらその理由をしきりに聞いてきたが、
初体験を済ませたばかりの姉の体を思いやり…
なんて言える筈もなく、
青空と私は顔を見合わせ、苦笑いするしかなかった。
◇
その夜はベットに入っても中々寝付けなかった。
色々な思いが頭の中を交錯する。
眠る事を諦めベットの上に起き上がる。
壁に背を持たれ、膝を抱えて座り込んだ。
時刻は丑三つ時。
仄暗い部屋の中、ベットランプの明かりが私を照らす。
部屋の壁に映るのは、ぼんやりとした虚ろな人影…
家族は深い眠りについていて、
静寂の中に、外からの虫の音が小さく響いていた。
パジャマの衿元から、シルバーチェーンのネックレスを引っ張り出した。
紫水晶の指輪…
夏休み明けに返そうと思っていたのに…
また返せなくなっちゃった…
大樹を選んだ以上、
流星の探している“紫(ムラサキ)ちゃん”だと、気付かれてはいけない。
流星の告白を断れば、彼を傷付けるだろう。
でも、私を紫(ムラサキ)ちゃんだと分かっていない事が、まだ救いかも知れない。
流星の中では、
私より紫(ムラサキ)ちゃんの存在が大きいみたいだから…
今思えば、多摩川縁で告白された時、この指輪を身に付けていなくて良かった。
あの時手元に指輪があったなら、
全てを打ち明けてしまっていた事だろう。
あの時指輪が手元になくて…
返事を先延ばしにして良かった…